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生地が出来上がると、次はいよいよそれが衣服としての形を作る、縫製へと工程を移します。岡山で完成した生地は遥か遠く、東北の工場に運ばれ、ここでもまた、職人の手による丹念な作業が行われます。縫製と一言でいっても、工程は大変多くを要します。職人それぞれが持ち場を担当するため、一本のジーンズは一人が織り上げるのではなく、たくさんの人の手が関わって初めて出来上がるもの。つまり、各部位のプロフェッショナルたちの結晶です。では、何故持ち場を担当した流れ作業なのか。それはミシンが大きく関与しています。A.W.Aは、旧式のミシンを使っているため、それぞれがよい意味で専門的、そして不器用。筒を作るミシンもあれば、ポケットを縫うミシン、裾の処理をするミシンもあります。ヴィンテージジーンズの良さを追求するために、当時と同じものを使うことで、不器用なミシンたちならではの魅力を、一本に詰め込んでいます。

例えばユニオンスペシャルは、ジーンズの歴史を支え続けた英国のミシンメーカー。昔ながらのデニムの多くは、これを使って縫製されてきました。ここ東北の工場には、その稀少なヴィンテージモデルが未だに使われています。現代の技術で補うメンテナンスを繰り返したこれらは、相変わらず現役。A.W.Aではお尻にあたる部分に施す巻き縫い、裾の折り返しや帯付けのチェーンステッチを、それぞれに特化した旧いユニオンスペシャルに任せています。

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もちろん、最新のミシンを使っても問題なく縫製できますし、機械にすべてを委ねても、ジーンズは完成します。でも、人が動かす旧式のミシンは、それと比較にならない風合いと人間味に溢れています。穿き手と同じように歳を重ね、味わいが深まり、ついには我が身の一部と化してくれるジーンズには、そんなミシンがぴったり。古着のジーンズが魅力に感じるのは、そんな工程で作られている所以かもしれません。

縫製糸の多くはヴィンテージジーンズと同様に綿糸ですが、A.W.Aは一部をコアヤーンと呼ばれる糸を採用しています。これは、ポリエステル糸を芯に用い、その周りをコットン糸でぐるぐると巻かれたもの。ジーンズをせっかく長く愛用しても、糸が解れてしまえばリペアするのは大変です。表面の綿糸は摩擦や色落ちによる味わいを与えつつ、強度に優れた根幹のポリエステル糸が、解れを防いでくれる仕組み。現代的といえばそうですが、一本のジーンズが魅力を増しながら長持ちさせるには、とても理に叶った糸といえるでしょう。

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