FINISH
デニムの顔に個性を作る、最後の工程が加工です。新品の状態にもかかわらず、あたかも既に穿き古したように見せるには、全体的な色落ちはもちろん大事。でも経年劣化とは人間が着用し続けた過程で生まれるユーズド感とは、表情があるもの。あるべき部分への強い加工が施されることで立体感を帯び、さらには汚れやダメージが加わり、はじめてジーンズらしく見えてきます。そのためには、やはりここでも職人の手は欠かせません。経験豊富な彼らの力加減が必要になってきます。それはとても緻密な作業で、ゆっくりと丁寧に、時間を費やしています。
まずは生地の削りだし。紙ヤスリを手やドリルに巻き付け、ときに優しく撫でるように、ときに力を注いで痛めつけるように、職人のみが持つ強弱のスイッチを切り替えながら行います。裾はたるませた状態でピンを打ちながらシワを固定し、脱色剤をたっぷりと染み込ませたタオルでなぞるように拭くことで、立体感を表現しています。その後は洗いの作業が待っています。色落ち具合を安定させるためには、中に入れるジーンズの重さに対しての水の量、そして洗う時間を決める必要があり、何回ものテストを繰り返すことで、理想を形にしていきます。一般家庭用の洗濯機の何倍もの大きさのドラム缶のような機械の中にジーンズを入れてぐるぐると回す、その光景はまさに圧巻です。